空き家 6分の1固定資産税→6倍はいつから? 対策特措法 ガイドラインを確認!
国の空き家対策措置により、6分の1だった土地の固定資産税が6倍になるのはいつから?…と気になっている所有者さんも多いことでしょう。
「実家の土地・建物を親から相続したけれど、使う予定がないから空き家の状態で放置したまま…」
今まではそれでも直接的な問題は無かったかもしれませんが、2015年施行の「空き家対策特別措置法(特措法)」によって状況が変わりましたよね。
(空き家対策特措法の施行前)
住宅が建っていれば、その土地の固定資産税が最大6分の1に軽減
↓ ↓ ↓
(空き家対策特措法の施行後)
その住宅が「特定空き家」に当てはまれば、土地の固定資産税は軽減対象から除外
…という風に。
これは空き家の相続人にとっては大変なことです。
そこで、空き家対策特措法のガイドラインを確認しながら、6分の1だった固定資産税は本当に6倍になるのか?いつから課税額が増えるのか?について調べてみました。
土地・建物の固定資産税の基本について
まず、土地・建物の所有者に課せられる固定資産税の基本から確認しましょう。
▼1月1日現在、所有者として市区町村の固定資産・課税台帳に登録されている個人・法人が1年分を納税する
▼行政から送られてくる納税通知書に従って年4回(4月、7月、12月、2月)に分けて支払うのが原則
▼固定資産税の額は、課税標準額(固定資産課税台帳に登録されている価格=固定資産税評価額)×税率1.4%で計算
▼市街化区域にある不動産の場合は、別に「都市計画税」もかかり、こちらは課税標準額×税率0.3%で計算する
▼3年に一度、固定資産税の評価の見直しが行われる
そして、住宅用の不動産に対しては固定資産税と都市計画税が軽減されるのです。
どれくらい軽減されるかと言いますと…
【住宅用地=住宅が建っている土地】
①面積200㎡までの部分
固定資産税:課税標準額を6分の1に
都市計画税:課税標準額を3分の1に
②面積200㎡超えの部分
固定資産税:課税標準額を3分の1に
都市計画税:課税標準額を3分の2に
(ただし、建物面積の10倍までの広さが限度)
…という風に、課税標準額を抑えて計算してくれます。
また、メインテーマの「空き家」と直接関係ありませんが、新築の建物に対しても(条件を満たせば)軽減措置があります。
建物面積120㎡までの部分は、固定資産税額が2分の1に減額になるのです。
(減額の期間は、3階以上の耐火・準耐火住宅は新築後5年間、その他の一般住宅は新築後3年間)
とにかく、人が住む住宅やそのための用地に対しては税金がとても優遇されているのです。
特定空き家だと固定資産税6分の1が無くなるのはいつから?
固定資産税の基本をおさらいしてみましたが、上述の通り、土地の上に住宅が建っていればその用地の固定資産税が最大6分の1になることがわかりました。
ですので、例えば親が住んでいた実家を相続して使用する予定がなくても、取り壊して更地にすると固定資産税が上がってしまいますから、ひとまず空き家のままにしておこう…という考えでも問題ありませんでした。
しかし、空き家放置が各地で増えたことから、2015年に施行されたのが「空き家対策特措法」。
「特定空き家」というものに指定されてしまうと、建物があっても、住宅用地の固定資産税の軽減が受けられなくなるというのです。
それはいつからでしょうか?
その前に「特定空き家」とは、どういう建物かと言いますと…
▼倒壊のおそれが高いもの
▼衛生上、有害になるおそれが高いもの
▼管理されず地域の景観を悪くしているもの…など
何となく想像つくと思いますが、壁が崩れている、柱が傾いている、屋根が落ちかけてる、浄化槽から汚物が出て異臭を放っている、大量のゴミ放置・不法投棄、窓ガラスが割れたまま、立木や草が生い茂っている…といった状態の空き家ですね。
簡単に言えば、かなり“ボロボロの家”というイメージ。
私もたくさんの放置空き家を見てきましたが、特に私の地域ではタヌキやコウモリが棲みついていた例がよくあります。
このような空き家のうち、危険度が高いものは行政の調査によって「特定空き家」に指定。
まずは所有者さんに対し、行政から「特定空き家になりましたよ」という告知と、今後の助言・指導が行われます。
それで改善が進まない場合は、助言・指導より強めの「勧告」へ。
それでも改善されない場合は、もっと強めの「命令」へ。
そして最終手段は「行政代執行」となり、建物を修繕されたり取り壊されてしまうのです。
修繕や取り壊しの費用は、きっちり所有者さんに請求が行きます…。
代執行まで行く例は数少ないと思いますが、実は「勧告」の段階で「住宅用地としての固定資産税6分の1の軽減対象からは除外されます」という通知がなされるのです。
いつからなるか?については、固定資産税の基本のセクションで述べたように(勧告を受けた翌年の)1月1日ということになりますから、この日までに何とか対応する必要があります。
しかしながら、まずは特定空き家の指定通知と助言・指導があるわけですから、通知を受け取ってすぐ対応すれば軽減対象から除外されることもないでしょう。
次のセクションでは、もし固定資産税6分の1軽減対象から外れた場合、本当に6倍になるのか?について触れます。
固定資産税6分の1対象外になった、または空き家を解体したら本当に6倍になる?
空き家対策特措法によって「特定空き家」の「勧告」を受けた場合、固定資産税の6分の1の軽減措置が受けられなくなることがわかりました。
所有している空き家がそうなった場合、あるいは放置せずに空き家を解体して土地のみにした場合、本当に固定資産税は6倍になるのでしょうか?
結論から言いますと、単純に数字だけ見れば6倍になりそうですが…実際には6倍になりません。
急に固定資産税が6倍になったら、かなり納税が厳しくなりますからね…。
6倍にならない理由は以下の通りです。
①「特定空き家」ということは老朽化が進行した建物であり、結局は取り壊される結果になりそう。取り壊されれば建物に対する固定資産税が無くなるから
②土地の税額計算には、急激な変動&負担増を防ぐための「負担調整」という制度があり、課税標準額を毎年ゆるやかに上げていく決まりがあるから
③住宅用地の軽減が受けられなくなっても、今度は商業地などの「非住宅用地」と同じ評価に変わります。非住宅用地は、地価公示価格の70%が課税標準額になるほか、さらに負担調整としてその価格の70%が上限価格に。つまり、0.7×0.7=49%まで引き下がられるから
少し複雑な話になってきましたが…とにかく、固定資産税6分の1の軽減が受けられないからといって急に6倍に跳ね上がる“緊急事態”というわけではありませんのでご安心を。
負担調整で毎年少しずつ上昇していく仕組みもあるので、実際には土地の固定資産税は3倍ほどになるという見方です。
今後の法改正によって変更はあり得るかもしれませんが、当面はこれが続くでしょう。
とはいえ、使っていない空き家がそのままの状態になっているようでしたら、賃貸するか・売却するか…色々な選択肢を考えてみましょう。
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