中古住宅の現状有姿引渡しの注意点とは?告知書や設備表の大切さ
中古住宅の売買契約書に「現状有姿(げんじょうゆうし)での引渡しとします」という文言が入れられることがあります。
売主としては、そのまま物件を買主に売り渡すだけなので、それほど責任を感じていないかもしれません。しかし、買主との認識のズレからトラブルに発展することもあるのです。
この記事では、現状有姿の意味や、気をつける点などについて確認したいと思います。
現状有姿の意味とは?
現状有姿の意味は「現在のあるがままの状態」です。中古住宅の売買に当てはめるなら…
①経年劣化によるキズ・汚れがあったとしても、売主は修繕しないで、そのままの状態で引渡します
②引渡日までに物件の状況が変わったとしても、売主はその時点の状態で引渡します
…となります。
「現状有姿での引渡しとします」という文言の裏には「中古物件なんだから、買った後に不具合があっても文句は言わないでね」という売主側の願いもあるかと思います。
これが正確に買主に伝わっていればいいのですが、売主の認識と一致していないとトラブルに発展する可能性が高くなります。
ですから「現在のあるがままの状態」がどんな状態なのか、しっかり買主に示すべきなのです。
「現状有姿の売買」で揉めそうな点
「現状有姿の記載があるからと言って、売主が瑕疵(かし)担保責任を負わなくていいという合意に至ったとは言えない」との判例があります。
つまり、あるがままの状態で渡すという約束と、物件に隠れた欠陥があった際の対応とは、別物だという解釈ですね。
例えば、買主側の立場になったとして考えてみてください…
物件の内覧時にエアコンやIHやウォシュレットが付いているのを確認し、現状有姿の売買契約で引渡しを受けてみたら、設備がすべて故障していた!とか。あるいは、水回りの床下が見事にシロアリに喰われていた!とか…だったらどう思いますか?
故障・不具合を事前に知らされていなかったら、絶対、売主に文句を言いたくなりますよね?
で、仲介業者と売主にクレームを入れたら「中古住宅だからしょうがないでしょう。現状有姿の約束なので一切直しませんよ」とか言われたら…。
訴えてやる!ってなりますよね。
ここが揉める原因ですので、現状有姿の売買は注意が必要です。
だから大切な「告知書」や「設備表」
上記のようなトラブルを避けるため、売買契約書に付ける資料「付帯設備表」と「物件状況報告書(告知書)」が大切になってきます。売主が直筆で書く書類になりますので、適当に仕上げてはいけません。
どんな設備が付いた状態か、それぞれの設備が使えるか使えないか、土地建物に関して買主に伝えるべきこと、あるいは近隣との申し合わせ事項はないか…などを詳細に記入していきます。
関連記事:付帯設備表&物件状況報告書とは?売主が記入する際の注意ポイントは?
仲介業者に丸投げしたくなりますが、物件をよく知っているのは売主ですし、告知は売主の責任です。
建物の見えない部分までわからない場合は、業者に点検・診断を依頼して見てもらってください。
「あるがまま」を把握し、買主にその情報を前もって明らかにしておけば、トラブルに発展することは避けられるでしょう。
必要に応じて、写真や動画を使って買主に補足説明してもいいと思います。
ちなみに「売主は瑕疵担保責任を負わない」という約束を交わしたとしても、買主が期待していた居住ができないような欠陥が発覚した場合、売主の立場は弱くなります。
修繕費などを賠償するなど、責任を負わなければいけないケースが多いです。