瑕疵借りネタバレあらすじ&感想…おすすめの事故物件ミステリーを紹介!


この記事は今までと少し趣向を変えまして、私が最近読んだ本を紹介したいと思います。

松岡圭祐さんの【瑕疵借り】(講談社文庫)という小説です。

賃貸アパート・マンションの事故物件(ワケあり物件)をテーマにした作品ですが、これが予想以上に泣ける人間ドラマでした。

瑕疵(かし)とは、土地建物の欠陥・キズという意味ですが、室内で自殺・火災などが発生した場合は心理的瑕疵物件と言ったりします。

こうした瑕疵については、次の入居者へ事前に告知する義務があることはご存知でしょう。

関連記事:事故物件の相場(売買)&売却方法は?土地売りの告知義務はどこまで?

関連記事:大島てる 売主も地図検索すべき理由&デマ発見時の対処法は?【事故物件サイト】

 

瑕疵借り(かしかり)というのは、お金をもらって意図的に事故物件などに短期入居する人のこと。

その目的は、次の入居者への告知義務を消滅させる(または軽くする)ためです。

私も賃貸管理会社に勤務していたころ、某全国ネットの賃貸業者には瑕疵借りがいる―と聞いたことがあります。

社会情勢も関わって、各地で事故物件の情報が増えている昨今。

小説【瑕疵借り】はフィクションであり、不動産売却とは直接関係ない内容ではありますが、瑕疵に対する考え方は参考になる部分があると思いました。

この記事では【瑕疵借り】に収められた4編のあらすじをネタバレしますので、興味を持った方は購入して読んでみてください。

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①「土曜日のアパート」 あらすじ・ネタバレ

福島県いわき市のコンビニでバイトしている吉田琴美は、薬剤師を目指す大学生だ。

喘息持ちの母親の病状を和らげたい―とその道を志し、親元を離れて生活している。

父親は事業に失敗、その穴埋めのために教育ローンの金を持ち去っていた。

クリスマスの夜、コンビニ店長からの命令で店の外にケーキ販売コーナーを設置し、ノルマ分のケーキを売ることになった琴美。

凍てつく寒さで客の出入りも少ない中、近所のアパートに住む40代の男性(峰岡修一)がやって来て「ノルマ分をすべて買おう」と言ってくれた。

それ以降、たびたび来店しては助けてくれる峰岡と言葉を交わすようになる。

しかし、峰岡が福島第一原発の作業員であることが発覚すると、店長は峰岡に心無い一言を放ってしまう。

その頃から峰岡の来店がパタッと無くなり、琴美は峰岡のアパート「メゾンK202号室」を訪ねたり、手紙をポスティングするが反応はなかった。

1年以上が経ち、ドラッグストア就職が決まった琴美のもとに、いわき市の遺品整理業者から電話連絡が入った。

「急性白血病で亡くなった峰岡修一さんの遺品に、あなたの手紙があったもので。ご家族の方をご存知ないですか?」

遺品整理業者から、峰岡は原発作業員であったにも関わらず労災認定を得られず、適切な治療を受けていなかった話を聞いた琴美。

峰岡は病院で亡くなったが、アパートは白血病の原発作業員が住んでいたことから「瑕疵物件」になるという。

感傷にかられた琴美がメゾンK202号室を訪ねると、すでに30代の無愛想な男(藤崎達也)が居住していた。

知り合いの不動産屋が言うには、その男は「瑕疵借り」という職業で、業界では有名な人物だという。

背後に何かあると察知した琴美は、峰岡の“死の真相”に迫ろうとする。

 

※以下、ネタバレになりますのでご注意ください

琴美は再びメゾンK202号室の藤崎に会いに行き、部屋を借りることになった経過を話さなければ、瑕疵借りのことをネットでバラすと迫った。

すると藤崎は、メゾンKのオーナー兼管理会社・ハウスキープからの依頼により、紛失している峰岡の貴重品類を探すことが居住目的だったことを明かす。

藤崎によると“ある仕掛け”を施すことで、間もなく何者かがメゾンKを訪ねて来て、貴重品の内容もわかると言うのだ…。

琴美が藤崎と部屋で待機していると、予告通りに何者かが隣の201号室のチャイムを鳴らし、その後に202号室にもやって来た。

現れたのは、峰岡を原発作業員として派遣した株式会社・高天楽の威山幸人専務だった。

峰岡は生前、貴重品類を入れた箱を「受取人が訪ねて来たら手渡してほしい」と201号室の住人に託していた。

それを回収に来る威山を先回りしていた藤崎は、威山を202号室に来るように仕向けた。

明かされた真実は―。

貴重品類の箱には峰岡が入社時に結んだ誓約書があり、そこには「勤務中の病気・ケガは自己責任であり、会社は一切の責任を負わない」という内容が記されていた。

労災申請できないように高天楽が仕組んでいたのだ。

箱には手紙も入っており、宛名には「吉田琴美様」の文字が…。

手紙には、峰岡の妻・和美娘・果歩が病気で亡くなっていたこと、もし果歩が生きていたら琴美と同じくらいの年齢だったことが綴られていた。

手紙の最後は「あなたの中に果歩を見ていた。あなたの将来に最高の幸せを願って。峰岡修一」と結ばれていた。

後日、琴美がメゾンK202号室を訪ねると、すでに藤崎は退去していた。

そのとき琴美は、瑕疵物件の真実を解明し、次の入居者に問題を引き継がせないことが藤崎の本当の仕事であることに気づいたのだった。

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②「保証人のスネップ」 あらすじ・ネタバレ

40代ながら無職の牧島譲二は、実家住まいで親のすねをかじっている、いわゆる「スネップ」だ。

大学を中退、おまけに社会復帰もできず、悶々とした毎日を送っていた。

ある日、茜荘というアパートの管理会社・岩田不動産から牧島に電話が入った。

鳴海遥香さんの連帯保証人様である、義理のお兄さんですね?遥香さんが家賃4カ月分を滞納して連絡がつきません」

昨年4月、保証人紹介会社に名義を貸すだけで報酬がもらえるサイトを見つけ、書類に署名捺印のうえ印鑑登録証明書も提出していたことを思い出した牧島。

サイトを確認したが削除されており、会ったこともない遥香という女性の連帯保証人として、茜荘104号室の現地確認に立ち会うことになってしまう。

遥香は26歳で、勤務先の会社を辞めており、唯一の肉親だった秋田県の父親も蒸発していたことを知る。

結局、遥香の行方はわからず、明け渡し訴訟を経て契約解除の扱いに。

連帯保証人である牧島は、家賃4カ月分の金を親から出してもらい、オーナーに支払うことで話がついた。

部屋の明け渡しにも立ち会った牧島は、遥香の所持品だったノートパソコンを茜荘オーナー・柿沼と閲覧。

そこには、遥香がスマホに向かって喋っている日記動画が何本も保存されていた。

牧島と遥香は面識がないにも関わらず、動画の遥香は「譲二お義兄ちゃん、今日ね…」と笑顔で語っていた。

柿沼いわく、遥香は事あるごとに「お義兄ちゃんに動画を送るから」と言って撮影していたというのだ。

実在しない義兄をあたかも存在するように装う理由とは…?

入居者失踪により、ワケあり物件となった茜荘104号室。

部屋の荷物が搬出される際、岩田不動産の社員が柿沼に持ちかけた提案を、牧島は耳にしていた。

「瑕疵借りを入居させますか?」

 

※以下、ネタバレになりますのでご注意ください

「瑕疵借り」とは、瑕疵物件の告知義務を引き継がせないためにワンクッション入れて住まわせる存在であることを知った牧島。

身寄りがない遥香のことを考えると他人事とは思えなくなり、失踪の真相を知りたくて茜荘104号室に向かった。

すでに104号室には藤崎達也が住んでおり、遥香のパソコンの動画も確認済みだった。

牧島があらためて遥香の日記動画を観ていくと、笑顔ばかりの動画の中に、就職活動がうまく行かずに泣いていた動画もあった。

父親が蒸発し、嘘の保証人を立てなければ部屋を借りられず、たった独り都会で頑張っていた遥香…。

藤崎から横須賀市本町で発生した“ある事故”について検索するよう促された牧島は、ついに真相にたどり着く。

「1月24日午後9時ごろ、居眠り運転のダンプカーが歩行中の女性をはねた―」

「アパートの連帯保証人」と名乗って横須賀警察署を訪れた牧島は、身元不明の遺体が遥香であることを確認した。

牧島がふたたび藤崎に会いに行くと、1本だけ観られていない牧島宛ての動画があったことを告げられる。

その動画を再生すると…「牧島譲二さん、連帯保証人になってくれて本当にありがとう。あなたは私にとってかけがえのない存在です」。

遥香の告白を受け取った牧島は、スネップをやめて自立することを決意したのだった。

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③「百尺竿頭にあり」 あらすじ・ネタバレ

食品卸売関連の営業をしている梅田昭夫(55歳)はクビになるかの瀬戸際にいた。妻・由美には伝えていない。

中古で購入した足立区の一戸建はローンが残っており、ともに会社員の長男・睦紀(37歳)と次男・秀平(35歳)も生活苦にあえいでおり、老後を支えてくれる希望は薄い。

そもそも息子2人とは疎遠と言える状況だった。

そんなある日、昭夫に不幸を告げる電話が鳴る。

睦紀がアパート自室で遺書を残して自殺し、遺体で発見されたというのだ。

遺書はなぜか会社宛てで「両親には、睦紀がかねてからの約束を果たしたがっている、そのように伝えてください」との文章が…。

挨拶のため、睦紀のアパート・サトリーハイム東池袋のオーナー・井川を訪問した昭夫。

睦紀が使っていた207号室を見たいと申し出ると、もうすでに次の入居者が住んでいるという。

その入居者は、瑕疵借りの藤崎達也だった。

睦紀と藤崎の容姿がダブって見えた昭夫は、ついつい藤崎に身の上話を始めていた。

すると藤崎から、睦紀が勤務していた健康食品販売の下請け会社がブラック企業だったことが明かされたのだ。

 

※以下、ネタバレになりますのでご注意ください

これが良い機会だと感じた昭夫は207号室に秀平を呼び出し、藤崎がいる前で、睦紀のことや家族のことについて本心を語った。

子供のころから内向的で対人関係が苦手だった睦紀は、大人になってからも長年無職であり、実は以前から自殺することを昭夫にほのめかしていた。

家族に頼ることも多かった自分を厄介者・お荷物であると責めつづけ、いつかケジメをつけると語っていた睦紀。

それを知りながら息子を放置してしまった昭夫は「私は父親失格です」とうなだれた。

自ら命を絶つことが、遺言にあった睦紀の約束だったのか―?

藤崎は「ほかに約束はありませんでしたか?」と昭夫に問いかける。

すると昭夫は、はるか昔に睦紀が「(中古購入の)家を新築に建て直したい」と言っていたことを思い出した。

さらに、睦紀がブラック企業に勤務を始めた3年前から生命保険に加入していたことがわかったのだ。

昭夫は自宅に戻り、引き出しの書類にまぎれている保険証書を発見。

そこには「被保険者:梅田睦紀、受取人:梅田昭夫」と書かれていた。

昭夫の脳裏に、子供のころの睦紀が「長男だから家をもっと大きく建て直すよ。約束する」と言っていたシーンが蘇り…。

昭夫が再びサトリーハイム東池袋207号室を訪ねると、藤崎が退去するところだった。

藤崎に睦紀の姿を重ねながら、昭夫は「さようなら」と心の中でつぶやいた。

保険金の受け取りは辞退し、家族で再スタートする決意を固めた。

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④「転機のテンキー」 あらすじ・ネタバレ

千葉県印西市に住む西山結菜は、小学生のころからパティシエになることを夢見て洋菓子づくりを勉強してきた。

しかし、中学2年生ともなると学校では進路や進学の話ばかり。

結菜は製菓学校に行きたいと両親に告げるが、「専門学校は授業料も高く、就職できる保証もないから認めない」と猛反対されてしまう。

ささやかな反抗を試みた結菜だったが、結局は親に逆らえず、地元の公立高校に進学。

やがて短大に入学し、コンピューター関連の会社から内定をもらった。

そんなある日、結菜が自宅の賃貸マンション714号室に帰宅すると、母親・幸恵が心臓麻痺で急死していた。

遺体搬出の際は野次馬に写真を撮られ、ネットの事故物件サイトにはマンション名・号室も表示され「変死」と書かれた。

マンションの管理会社からは室内清掃や床の張り替えを求められ…結局、結菜は父親・哲治とともに追い出されるようにマンションを退去することになった。

引っ越しの荷物をまとめていた結菜は、☓印が書き込んである段ボール箱が2つあることに気づく。

段ボール箱の中身を尋ねても、哲治は「なんでもない」と急に険しい表情になり、結菜から箱を遠ざけた。

結菜は母親の遺品だと推測しながらも、どうも哲治の態度が気になった。

さらに父親に黙っていた就職内定を告げると、なぜか哲治は急に激高したのだった…。

新居である賃貸マンションに引っ越したものの、厳格な父親とのすれ違い生活に疲れ、結菜は印西市のマンション714号室に向かっていた。

 

※以下、ネタバレになりますのでご注意ください

714号室には別の入居者が住んでいた。

結菜がオートロックマンションのインターホンを鳴らすと、スピーカーから応答したのは藤崎達也だった。

結菜は前入居者の遺族だと告げ、マンションのロビーで藤崎と会い、714号室に入居した理由を尋ねた。

返ってきた答えは「瑕疵借りです」。

結菜は藤崎に、幸恵の死、哲治の激高、段ボール箱のことなど経過を話した。

すると藤崎は、幸恵の旧姓のフルネームをネットで検索するよう促してきた。

「浦賀幸恵、1968年11月7日生まれ、大分県出身……2001年度・菓子職人コンテスト優秀作受賞者…!」

幸恵は昔、腕の良いパティシエだった。

それでも結菜が製菓学校に進むことに反対したのは、菓子職人として生活していくことの厳しさを身に沁みて知っていたから。

娘にはせめて短大は卒業し、社会で通用する教養を得てほしいと考えていた哲治と幸恵。

実は、結菜が卒業したあかつきには、幸恵の当時の人脈をたどってパティシエの道を応援しようと計画していた。

哲治が隠そうとしていた段ボールには、幸恵がパティシエだった当時の写真やレシピが入っていた。

結菜と哲治の間にあったわだかまりが解け、父娘の新しい生活が始まった。

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瑕疵借りの感想&まとめ

松岡圭祐さんの小説【瑕疵借り】のあらすじをまとめてみましたが、どのような感想を持ちましたか?

最後まで読んでみて私が印象に残ったことは、事故物件・ワケあり物件をテーマにしながらも、最終的には関係者が過去と決別し、新しい日々に向かって一歩を踏み出す結末になっている部分です。

「瑕疵借り」という仕事自体はあやしい雰囲気ですが、仮に小説のように物件の問題点を洗い出して改善する目的で成り立っているなら素晴らしい職業ですね。

個人的に好きだったのは二番目のストーリー『保証人のスネップ』です。

物語のラスト、長年引きこもりだった牧島が自立を宣言しますが、これに対し藤崎が「何かを始めるのは怖いことじゃありません。怖いのは何も始めないことです」と語ります。

日々、行動すること・変わることが大切だというこの言葉は、今の私には響きました。

 

賃貸物件で事故が起きてしまうことは仕方がないことです。

それでも、次の新しい居住者が生活を始められるよう適切な処置をし、関係者をサポートするのも我々の大切な仕事である―とあらためて実感。

「宅地建物=皆さんの生活基盤」を扱っている立場として、気持ちを新たにした作品でした。

 


2018年06月15日 | Posted in 書評 | タグ: , Comments Closed 

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